製造業の熱中症労災事例5選!実際の発生状況と予防対策を解説
「製造現場で熱中症による労災が発生してしまった。同じような事故を防ぐにはどうすればいいのか」
「工場での熱中症労災の実例を知って、自社でも対策を強化したい」
夏場の製造現場では、高温の機械設備や換気不十分な環境により、熱中症のリスクが高まりますよね。実際に、製造業は建設業と並んで熱中症による労災が多い業種です。
熱中症労災を防ぐには、実際の事例から学び、適切な予防対策を講じることが重要です。
対策の種類 |
具体的な内容 |
|---|---|
環境整備 |
WBGT測定、冷房設備の設置、換気改善 など |
作業管理 |
休憩時間の確保、水分・塩分補給、作業時間調整 など |
健康管理 |
体調チェック、持病への配慮、睡眠状況の把握 など |
教育訓練 |
熱中症の症状・予防方法、応急処置の周知 など |
これらの対策を適切に実施することで、従業員の安全を守り、労災事故を未然に防ぐことができます。
本記事では、製造業における熱中症労災の発生状況や実際に起きた熱中症労災の事例、効果的な予防対策について詳しく解説します。
1.製造業における熱中症労災の発生状況
製造業における熱中症労災の発生状況は年々深刻化しています。
ここでは、最新の統計データをもとに、製造業での熱中症労災の実態を確認しましょう。
1.1 製造業は建設業と並んで熱中症労災が多い業種
厚生労働省の統計によると、製造業は建設業と並んで職場における熱中症労災がもっとも多く発生している業種です。
2021年から2025年までの5年間に発生した熱中症の死傷者数5,554人のうち、製造業は1,063人、建設業は1,038人となっており、この2業種だけで全体の約4割を占めています。
1.2 製造業で熱中症が多発する理由
製造業で熱中症労災が多い理由は、高温の機械や設備の周辺での作業、換気が不十分な屋内環境、夏場の倉庫内作業など、作業環境に起因するものが大きいです。
とくに溶接作業や焼成炉の近く、密閉された倉庫などでは、気温・湿度ともに高くなりやすく、熱中症のリスクが高まります。
また、場所によっては、製品や原材料を保管する倉庫でコスト面からエアコンが設置されていないケースもあります。重量物の運搬や荷積み作業は身体的負荷も大きく、熱中症を発症しやすい状況です。
2.製造業で実際に起きた熱中症労災事例
製造業では、さまざまな作業環境で熱中症労災が発生しています。
ここでは、実際に労災認定された具体的な事例を紹介します。
2.1 事例①工場内での充填作業中に発症
ある化学製品製造工場で、作業員が充填作業中に熱中症を発症した事例です。
被災者は、50~60℃に加温したタンクの下で充填作業を行っていました。さらに隣には50℃の充填済み製品が置かれており、周囲は非常に高温な環境でした。作業中に体調が悪くなり休憩しましたが、頭痛と吐き気の症状が出現し、病院を受診した結果、熱中症と診断されました。
この事例では、高温の設備周辺での作業という業務環境と、熱中症発症との因果関係が明確であるため、労災として認定されています。タンクから発せられる熱により、作業場所の暑さ指数が非常に高い状態であったにもかかわらず、十分な休憩時間の確保や冷房設備が整っていなかったことが問題視されました。
2.2 事例②夏場の倉庫内作業で熱中症を発症
塗料製造業の倉庫で、ラベル貼り作業中に熱中症を発症した事例です。
被災者は夏場の午前中、高温のテント倉庫内でラベル貼り作業を行っていました。昼休憩時に体調が悪かったため休んでいましたが、急に頭痛や手足の筋肉の硬直が始まり、呼吸も苦しくなったため、病院へ搬送されました。診断の結果、熱中症と確認されました。
テント倉庫は金属製の恒久的な建物と比べて断熱性が低く、夏場の日中は内部温度が極めて高くなります。この事例では、換気設備や冷房設備が不十分であったこと、作業者の体調変化に気づいた時点で作業を中止させる体制が整っていなかったことが、熱中症の発症と重症化につながったと考えられます。
2.3 事例③工場内の溶接作業中に体調不良
金属製品製造工場で、溶接作業中に熱中症を発症し、死亡に至った事例です。
被災者は工場内で溶接作業に従事していましたが、作業中に体調不良となり休憩室で休憩していました。しかし症状が改善しなかったため、午後4時過ぎに病院を受診しましたが、その後死亡が確認されました。死因は熱中症によるものと診断されました。
溶接作業は、溶接機自体が高熱を発するため、作業者の周辺温度が非常に高くなります。また、防護服や面を着用するため、体温がこもりやすい状態です。この事例では、体調不良を訴えた時点で適切な冷却処置や医療機関への早期搬送が行われなかったことが、重篤化につながったとされています。
2.4 事例④倉庫内で荷物積み替え作業中に発症
塗料製造業の屋外倉庫で、荷物の積み替え作業中に熱中症を発症した事例です。
被災者は夏場の屋外で、20kg の粉体塗料を1袋ずつ運び、計300袋を運送業者のパレットへ積み替える作業をしていました。作業中に体調が悪くなり、休憩を取りましたが、その後痙攣症状を起こしました。救急搬送され、熱中症と診断されました。
重量物を繰り返し運搬する作業は、身体的負荷が非常に大きく、発汗量も多くなります。適切な水分・塩分補給が行われず、十分な休憩時間も確保されていなかったことが、熱中症発症の原因と考えられます。屋外作業では直射日光も加わり、より過酷な環境となります。
3.【2025年6月施行】企業は熱中症対策が義務化されている
2025年6月の労働安全衛生法の改正により、「労働安全衛生規則」に熱中症対策に関する具体的な条項が追加され、事業者には従業員の熱中症対策が法的に義務付けられました。
事業者には以下の義務が課せられています。
おもな改正ポイント |
詳細 |
|---|---|
WBGT値(暑さ指数)の把握義務 |
作業環境の暑さ指数を測定・評価すること |
作業環境管理の実施 |
高温多湿環境での適切な環境改善措置を講じること |
作業管理の徹底 |
作業時間の短縮や休憩時間の確保など、適切な作業管理を実施すること |
健康管理の強化 |
作業前後の健康状態の確認や、異常時の迅速な対応体制を整備すること |
労働衛生教育の実施 |
管理者・作業者への熱中症予防に関する教育を実施すること |
現在はすでに完全義務化の段階に入っており、すべての対象事業場で適切な対策を実施していることが求められています。
「まだ準備が整っていない」という企業は、早急に対策を講じる必要があります。
4.製造現場で実践すべき熱中症予防対策
熱中症労災を防ぐには、作業環境の整備から労働者の健康管理まで、多角的な対策が必要です。
ここでは、製造現場で実践すべき具体的な予防対策を紹介します。
対策①暑さ指数の把握と管理
対策②作業環境の整備
対策③作業時間と作業負荷の管理
対策④水分・塩分補給の環境整備
対策⑤労働者の健康状態の把握
それぞれの詳細をひとつずつみていきます。
4.1 対策①暑さ指数の把握と管理
暑さ指数とは、WBGT(湿球黒球温度)のことで、気温、湿度、輻射熱の3つを総合的に評価した熱中症予防の指標です。
製造現場では、WBGT計を作業場所に設置し、定期的に測定することが重要です。測定は少なくとも1日3回(始業時、昼休憩前、午後の高温時)行い、記録を保管しましょう。WBGT値が28度以上になる場合は、熱中症予防対策を強化する必要があります。
測定したWBGT値は、作業場所の見やすい位置に掲示し、労働者が現在の暑さレベルを把握できるようにします。また、WBGT値に応じて作業時間を調整したり、休憩頻度を増やしたりするなど、柔軟な対応が求められます。たとえば、WBGT31度以上の場合は、連続作業時間を短縮し、より頻繁な休憩を取るようにします。
4.2 対策②作業環境の整備
作業環境の温度を下げることは、熱中症予防の基本です。
まず、冷房設備の設置または強化を検討しましょう。工場全体の冷房が難しい場合は、局所的に空調できる機器を導入し、作業者の近くを局所的に冷却する方法も有効です。また、大型扇風機や送風機を配置し、空気の循環を促進することで、体感温度を下げることができます。
屋根や壁に遮熱シートを貼ったり、窓に日よけやブラインドを設置したりすることで、太陽光による輻射熱を軽減できます。金属製の屋根は日射により高温になりやすいため、遮熱塗装を施すことも効果的です。
4.3 対策③作業時間と作業負荷の管理
高温環境下での作業時間や作業負荷を適切に管理することで、熱中症のリスクを軽減できます。
気温がもっとも高くなる午前10時から午後4時までの時間帯は、可能な限り屋外作業や高温環境での作業を避けるようにします。やむを得ず作業する場合は、作業時間を短縮し、より頻繁な休憩を取りましょう。
連続作業時間を制限し、長時間同じ作業者が高温環境で作業しないようにします。複数の作業者で交代制を導入し、一人当たりの暑熱環境での作業時間を減らすことが効果的です。
4.4 対策④水分・塩分補給の環境整備
4.5 対策⑤労働者の健康状態の把握
労働者の体調を日常的に把握し、熱中症のリスクが高い状態を早期に発見することが重要です。
毎朝の作業開始前に、体調チェックを実施します。睡眠時間、朝食の摂取状況、体調の異変の有無などを確認し、記録します。体調不良や睡眠不足が確認された場合は、作業内容を軽減したり、涼しい場所での作業に変更したりしてください。
作業中も定期的に労働者の様子を観察し、顔色が悪い、発汗量が異常に多いまたは少ない、動作が緩慢になっているなどの異変がないか確認します。異変を感じたら、すぐに作業を中止させ、涼しい場所で休憩させましょう。
5.工場の熱中症対策には移動式エアコンがおすすめ
工場は、適切な温度管理をおこなうことが求められますが、常設型の業務用エアコンを設置するとなるとかなり高額になってしまいます。企業としての予算が限られているなかで、大型の空調設備整備に予算を確保することが難しいのが正直なところです。
そこでおすすめなのが「移動式エアコン」です。
移動式エアコンは工事が不要で、本体のプラグをコンセントにつなぐだけでその日から使用できます。
一般的にキャスターで自由に移動できるタイプのため、とくに冷やしたい・暖めたい場所の近くに設置でき、特定のスペースに風を集中させることで無駄なく効率のよい稼働を実現可能です。
機種にもよりますが、移動式エアコンは業務用で利用されることを想定しているため、高い能力を備えているものが多くなっています。さまざまなサイズ・冷房・暖房能力を備えているものがあるため、工場や倉庫の大きさ・構造を考慮したうえで、最適なものを設置するのがおすすめです。
6.移動式エアコンの導入なら信越空調の「ヒエスポ」
工場や倉庫の熱中症対策には、移動式エアコン「ヒエスポ」が最適です。
ヒエスポは、配管工事が不要で電源さえあれば設置できるため、導入のハードルが低く、すぐに使い始められます。
業界No.1の風量を誇り、大空間でも強力な冷房効果を発揮するため、工場や倉庫のような広い作業場所でも十分に冷やすことができます。
他社のスポットエアコンと比較しても、ヒエスポは冷房到達距離が圧倒的に長く、遠くまで冷風が届くのが特徴です。
■ヒエスポの特徴
配管工事不要で電源接続だけで即日使用可能
業務用としてパワフルな冷房能力(2.8kW~14.0kW)
冷暖房兼用で年間活用できる
キャスター付きで移動が容易
堅牢なアルミ製筐体で耐久性が高い
購入・レンタル・リースから選べる
ヒエスポを導入すれば、「作業場所が涼しくなり、従業員が快適に働けるようになった」と実感できますよ!
7.まとめ
製造業では、高温の機械設備周辺での作業や換気不十分な環境により、熱中症のリスクが高くなっています。実際の労災事例を見ると、充填作業、倉庫内作業、溶接作業、焼成室での監視業務など、多様な場面で熱中症が発症しています。
予防対策としては、WBGT測定による暑さ指数の把握、冷房設備や換気設備の整備、休憩場所の確保と水分・塩分補給体制の構築、作業時間や作業負荷の適切な管理、労働者の健康状態の日常的な把握、そして労働衛生教育の実施が重要です。
これらの対策を総合的に実施することで、従業員の安全を守り、熱中症による労災事故を未然に防ぐことができます。経営者や現場責任者は、今すぐ自社の熱中症対策を見直し、必要な体制を整備しましょう。

