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工場の暑さ対策における換気方法とは?効果的な空調設計のポイントを解説

工場で働く従業員にとって、夏場の「暑さ」は無視できない大きな課題です。天井が高く、空間の広い工場内では、空気がこもりやすく、熱が逃げにくい構造になっており、外気温以上に作業環境が悪化することも珍しくありません。厚生労働省の統計によれば、製造業における熱中症の発生件数は全業種の中でも高水準であり、現場の暑さ対策は企業の重要課題です。
その対策の中でも中核を担うのが「換気」です。単に窓を開けるだけでは対策にならず、工場の特性に合わせた計画的な換気設計が不可欠です。本記事では、換気の重要性や工場特有の課題、具体的な換気手法、空調との併用、導入時の注意点までを総合的に解説します。
 

1. なぜ工場に換気が必要なのか?

工場では、機械の稼働による熱や化学物質、作業人数の多さなどにより、室内の空気が急速に悪化する傾向があります。以下のような理由から、計画的な換気は不可欠です。
熱中症のリスク低減:折板屋根など断熱性の低い建物では、室内温度が外気より10℃以上高くなることもあり、熱中症の原因となります。
作業効率の維持:高温多湿環境では集中力が低下し、ヒューマンエラーや事故リスクが増加。28℃を超えると作業効率は明確に低下します。
感染症対策:空気のよどみはウイルスの浮遊リスクを高めます。三密対策としても換気は必須です。
有害物質の排出:溶接や塗装、加工などで発生するガスやミストを効率よく排出し、法令基準を守るためにも換気設計が重要です。

2. 工場換気の課題と難しさ

2-1. 空間の広さと天井の高さ

工場の「高天井・大空間」は換気設計の難易度を上げます。10mを超える天井では、熱が上層にこもりやすく、冷気は床に届きづらくなります。自然換気では中央部や壁際の「死角」に空気が届かず、空気環境のムラが発生しがちです。
さらに、屋根や壁の断熱性能が低い場合、外気との熱貫流により温度成層が起こり、効率的な換気を阻害します。
 

2-2. 換気設備の老朽化

経年劣化により、換気扇やダクトの性能が著しく低下します。ホコリや油分の堆積により風量が落ち、設計通りの空気循環が機能していないケースが多くあります。省エネを理由に風量を絞った運転では、法定の換気基準を下回り、安全衛生上のリスクにもなります。

2-3. 熱源が多く、熱がこもりやすい構造

射出成形機や溶接機など、熱を発する設備が多い工場では、排熱が室内に蓄積しやすく、通常の換気だけでは温度制御が困難です。さらに、床材や壁材が蓄熱する構造の場合、夜間でも温度が下がりにくく、翌日の稼働開始時点からすでに高温状態となることもあります。
 

2-4. 粉じん・臭気・湿気など多様な空気問題

加工内容により、さまざまな空気汚染源が存在します。食品工場では蒸気や臭気、金属加工工場ではミストや粉じん、化学工場ではVOC(揮発性有機化合物)など、一つの換気方式だけでは対応しきれません。バグフィルター、脱臭装置、活性炭などを組み合わせた複合的な換気設計が必要です。
  

3. 工場換気の代表的な4つの方法

3-1. 局所換気

発生源近くで直接吸引する方法で、作業者の呼吸域に到達する前に汚染物質を排出できます。

フードの形状や設置位置、吸引力のバランスが非常に重要で、作業者の動線や作業姿勢を妨げない工夫も求められます。

3-2. プッシュプル換気

送風と排気を対で行う方式で、作業テーブルを挟んで一定方向の気流を作り、汚染物質の拡散を防止します。気流制御が重要で、塗装や薬品使用の現場などに最適です。気流の調整で空間全体の空気の質も安定します。
 

3-3. 希釈換気(全体換気)

工場全体に外気を取り込み、内部の空気を薄めて排出する方式。特定の発生源に依存しない暑さ対策やCO₂濃度管理に有効です。センサーを用いてCO₂や温度の変化に応じた制御を行うことで、省エネと快適性の両立が可能です。
 

3-4. 置換換気

床付近から冷気を吹き出し、熱を含んだ空気を上部から排出する方式。作業エリアの温度環境を分離し、快適な層を形成できます。加熱炉など高温作業エリアでは、局所快適性を保ちつつ全体の空気循環を促進できる点で優れています。
 

4. 換気だけで解決できない課題も。
空調との併用がカギ

4-1. 換気では温度を下げきれない

工場内の換気はあくまで「空気の入れ替え」であり、空気そのものの温度を下げる機能はありません。
特に夏場の工場では、換気によって取り込まれる外気温が30℃を超えることが多く、結果的に室温がほとんど変化しない、もしくは上昇してしまう場合もあります。大型機械が稼働している空間では、機器からの発熱により40℃以上の高温になることもあり、これを換気のみで抑えるのは不可能に近いのが現実です。
 
 

4-2. 移動式空調の併用が有効

換気とともに活用されるべきなのが、移動式空調機器です。中でも「ヒエスポ」のような製品は、工事不要で設置でき、必要な場所にピンポイントで冷風を供給できる点が魅力です。作業者の頭上や背後に直接冷風を届けることで、局所的に体感温度を3〜5℃下げ、熱中症予防にもつながります。また、作業環境や時間帯に応じて柔軟に移動させることができるため、スポット的な暑さ対策として非常に有効です。
 

4-3. 空調と換気の連携で相乗効果

換気により汚れた空気を外に出し、空調により清浄で冷却された空気を循環させることで、空気の質と温度の両面から環境改善が可能になります。外気冷房と除湿機能を持つ空調システムを併用すれば、消費エネルギーを抑えつつ快適な室温・湿度の維持が可能です。さらに、CO2センサーや温湿度センサーによる自動制御と組み合わせることで、省エネと効率性を両立する運用が期待できます。
  

5. おすすめは移動式空調「ヒエスポ」

信越空調が提供する「ヒエスポ」は、工場内の暑さ対策として設計された移動式業務用エアコンです。

即効性:電源を入れるとすぐに冷風が出るため、急な気温上昇時にも迅速に対応可能です。
可動性:キャスター付きで移動が簡単。作業ラインの変更やレイアウト変更にも柔軟に対応できます。
工事不要:導入時にダクト工事などが不要なため、コストと時間を大幅に削減できます。
局所冷却×換気との併用効果:特定エリアを集中的に冷却することで、換気との相乗効果で全体の空調効率も向上します。

製品検査室、フォークリフト作業エリア、検査場や事務所、休憩スペースなど、冷房が行き届きにくいエリアで特に力を発揮します。
   

6. 効果的な導入のポイント

6-1. 現場調査の徹底

温度・湿度・風量・空気質などを多点で測定するだけでなく、作業員へのヒアリングを行い、どの場所・時間帯に「暑さ」「ニオイ」「空気の悪さ」を感じているかの定性情報も収集しましょう。これにより、投資の優先順位やピンポイント対策の計画が可能になります。
  

6-2. パイロット導入と段階拡大

まずは最も深刻なエリアで試験導入を行い、数週間の使用実績から効果を検証します。運用におけるトラブルや反応、従業員の声を反映させたうえで、本格導入に移行することで、設備投資のリスクと無駄を回避できます。
   

6-3. 維持管理と省エネ運用

導入後はフィルター清掃、可動部点検、換気ルートの再評価などを定期的に行いましょう。また、温湿度センサーとの連動により、ピークタイム以外は風量を抑えるといった工夫も、電力コストの抑制につながります。
    

7. まとめ

工場の暑さ対策には、換気と空調の併用が不可欠です。特に高天井・大空間・熱源の多さといった構造的な課題を持つ工場では、計画的かつ多角的なアプローチが求められます。
換気のみで室温を下げるのは難しく、汚染物質への対策や感染症リスクの抑制にも限界があります。こうした中、「ヒエスポ」などの移動式空調を活用すれば、工事不要・即効性・可動性という点で非常に柔軟かつ現実的な対策が可能になります。
本格的な夏を迎える前に、まずは現場の空気環境を見直し、従業員の健康と生産性を守る設備投資を検討してみてください。